建築に対する想い

2015.06.16 火曜日 21:02

今回も旅行の話。 
 
旅行初日にスイスのバーゼルにほど近いドイツのまち、ヴァイル・アム・ラインに寄った。デザイナーズ家具のブランド、ヴィトラ社の建築群を見学するためだ。ガイドに案内してもらい倉庫や工場など立ち入り禁止エリア内の建築を見ることができた。ガイドの女性は、全く英語ができない私たちに中学校レベルの単語とジェスチャーで丁寧に説明してくれた。お礼を言いたい、サンキューベリーマッチ。 
 
この建築群を見学して、自社建築のデザインに対する強い想いが伝わってきた。 
通路の奥突き当たりにザハ・ハディド設計の施設内消防署が建っている。時系列的にこの消防署が先に建設された。その後消防署の手前にアルヴァロ・シザ設計の工場が建設されることになり、その通路を横切るように屋根付きの渡り廊下が必要になった。ところがその屋根の存在によって奥の消防署が見えづらくなってしまう。 
 
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そこでどうしたか。普段は高い位置ある屋根が、降雨の時のみセンサーで感知し屋根が降りてくるというのだ。船が通るとき上がる橋は聞いたことはあるが、景観それも建築が見えなくなるという理由で屋根を可動にする感覚に本当に驚いた。お金もかかっていることだろう。 
 
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つぎに敷地奥の倉庫に移動した。 
妹島和世と西沢立衛とのユニットSANAA(サナア)の設計。波打ったアクリルガラスが連続しているだけでもきれいだが、表面にボルト等の金物が全くない。単純な形状を追求するためにはパネルの固定方法や熱変形への対応には大変苦労したとガイドが言っていた(と思う)。 
 
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よく考えてみると、この倉庫が建っているエリアは立入り禁止。つまり従業員など限られた者しか見ることができず、一般の人は体感できない。私は建築のファサードデザインは地域やその周辺に何らかの意図を伝える為と思っていたが、この倉庫は従業員というかなり限られた範囲がその対象ということだ。従業員の為だけに、お金をかけて、苦労して新しい工法を開発して美しい建築をつくる、これには感動した。 
 
この日は人の優しさや美しい建築に触れ、満開のさくらとおいしい料理、最高の一日だった。 
(文中、敬称略)

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