介助しやすいトイレ

2019.11.09 土曜日 11:04

今回は介護用に設計したトイレの話。

おばあさんと同居することになった住宅の増築計画である。介護にはいろいろな段階はあるが、介助者が必要な場合、介助しやすい位置は便器の横になります。車いすを横付けして抱き上げての移動や拭く手伝いする動作でも横が便器横が開いていることが重要。

廊下から見たトイレの引き違い扉。奥がおばあさん用の寝室。トイレが隣接している計画。

こどもの居場所

2019.11.02 土曜日 20:52

お子さんがいる家庭で、宿題をどこで行うかいろいろな考え方があると思う。子供のプライベートを尊重して、専用に部屋を設ける考え方。いわゆる子供部屋の設置。

その対極として宿題や勉強を家族にコミュニケーションのツールと考えて、普段親の目が届き宿題を一緒に考えることができるダイニングテーブルなどの家族共用空間をその場とする考え方がある。

そのふたつの考え方を両端の位置にあると定義してみる。子供の成長の過程でその両端だけで成立するのだろうか。小学生高学年にもなれば親に全てをさらけ出すのもどうかと思う年齢になり、親に内緒で友達とSNSで楽しみたいこともある。一方親としてはまだまだ幼い子供を部屋に押し込めるには不安があると考える。やはり中間的な居場所は欲しいところ。

そこで、階段に上がりきったホールに板を渡しただけの作り付けの机を設置してスタディコーナーを提案してみた。子供としては親の視線が気にならなくなるし、親としてもなんとなく気配は感じ取ることができるちょうど良い中間領域になった。帽子やランドセルをかけられるように壁の一部に板を張るなど「装置」にも気を使った。子供部屋よりは開放感を感じられる空間ボリュームにして部屋にこもらないように工夫した。

ワイン博物館

2019.10.30 水曜日 13:08

以前、海外で感じた街であふれる会話の想いを書いた。その続き。

先日、フランス・ボルドーを訪れた。ワインの街ボルドーにはワイン専門の博物館がある。まずは建築、XTUアーキテクツの設計。郊外の再開発エリアにあるその建物は、エスカルゴの様な、デキャンタの瓶の様な複雑な曲線で構成された建物。写真での印象とは違って圧迫感を感じるような巨大建築ではなく上手くスケール感を調整していると思う。外部の印象より内部が広いと感じた。

建築も斬新だが、展示物も経験したことがない展示手法だった。入口でスマホ大の端末とヘッドフォンを渡される。一般的に美術館などの有料音声ガイドは補助的な解説用であり借りなくて展示は楽しめるが、この博物館ではその端末がないと成立しない。至るところに端末をかざす印があり、近づけると音声が流れてくる。ほとんど文字情報のパネルなどは見当たらず、各展示物は端末からの音声で情報を受ける。一見何の展示が分からなくてもその印を探して解説を聞きながら楽しむ、その行為が展示に対しなんとなく能動的に参加しているような気持ちなるのだ。

その端末は 日本語など20か国に対応しているが、ついでに作った感は全くなく、翻訳家や脚本家、複数の声優などきちんとした日本語録音チームによって制作されたのは想像に難くなくとてもクオリティーが高い。展示量はとても多く、それを20カ国分あるのだからコストと手間は膨大だっただろう。そのあたりが言葉を重んじる国民性の良さかなと思うだが、さらに印象的な展示があった。

細長いダイニングテーブルがあって、ワイングラスやお皿を模したオブジェが乗っている。その周りに背もたれが高い椅子が並んでいてそのうちの2つの背もたれがディスプレイになっている。その画面には若いソムリエともう一方には客の紳士が映っていて、ワインについて熱く語り合っているのだ。空いている椅子に座っているとあたかもどこかのレストランでふたりの会話に参加しながら食事しているような錯覚になる。わざわざその雰囲気作りをする発想がとても興味深い。やはりワインは重要なコミュニケーションツールということなのだろう。

他にこの博物館ではワインの試飲もできる。試飲と言ってもワイングラスで通常に量なので弱いわたしはしっかり酔ってしまった。

建築が消えるとき

2019.10.26 土曜日 14:28

建築設計を生業にしてから久しいが、自身が設計し既に解体された建物は2件ある。ともに仮設的な建築ではあるが。

まずは、保育所の建替えで敷地内に建てた仮設園舎。仮設といっても基礎は鉄筋コンクリートでしっかり作り、時間をかけて検討、計画したので想い強かった。使用期間は数か月ではあったが着工から解体まで見守った。やはり仮設のプレハブ建築の解体はあっという間に終わってしまう。十数日前まで子ども達の声がきこえてきた建物がすっかり消えてしまったとき、更地になった土の上を無意味にうろうろしたのを記憶している。

つぎは、今から二十年以上前、大学在学中に設計した焼物小屋。属していたサークルの美術研究会の活動で使う陶器を焼く灯油窯の小屋。窯は活動の象徴で部員にとって大切な存在だ。長い間使っていた手づくの窯を取り壊すことになり既成の窯を購入し、その囲いを建築学科という理由で私が設計することになった。図面や写真は一切手元に残っていないが、とにかく楽しくて夢中で鉛筆を動かしたことを覚えている。単管パイプを組んで波板で囲うだけの簡単で仮設的な小屋だったと思う。卒業後しばらくして後輩から解体されたことを聞かせれた。

悲しい気持ちにはならなかったがいろいろ考えた。形あるものはいづれ消える。建築なら数十年、車や家電製品は十数年、その他一年で消えるものや数日というのもある。ディナーで出てくる美しい一皿は数十分で消えてしまうのがシェフはどのような気持ちなのか。建築は自分を表現したものが長年存在するので設計者は幸せ者と思っていたが、料理のように一瞬で消えてくれた方があきらめがつくのかな、なんて想ってみたり。

角がたたない丸テーブル

2019.10.24 木曜日 10:28

ダイニングテーブルの形の話。

長方形がもっともポピュラー。それは部屋が四角形なのでテーブルも四角形にすれば一番有効にテーブルの面積がとれるから。作る側目線としてもその方が板材の無駄少なくなる。私も住宅を設計する際、まずは長方形のテーブルを想定してダイニングのスケッチを始める。

でも四角いテーブルは文字通りどうしてもいろいろと角が立つ。ハード面では、角があるのでよく腰あたりをぶつけて痛い思いすることしばしば。次にソフト面、座る場所によって何となくの上下関係が生まれる。上座、下座、お誕生日席など。

対して丸いテーブルはどうか。四角い部屋に丸テーブルでは、当然部屋に対するテーブル最大可能面積より小さくなるし、四角い製材を丸く切るので無駄が大きくなってしまう。ただ、丸テーブルは四角いテーブルより角がとれて優しいイイヤツになる。

上下関係がなくなるばかりか丸テーブルを囲んだときの一体感はなんとなく心地いい。テーブル中央の照明は、四角の場合はどうして角周辺が暗くなってしまうが、丸テーブルでは同心円状にムラなく照らしてくれる。

そんな理由で以前にデザインした丸テーブル。市販の丸テーブルでは小さいとのリクエストがあり大きめ径に設定した上で、自由な位置に座れるよう脚を中央に配したところが工夫した点。納品して数年経っているのでどんな感じに使い込まれているか久しぶりに伺いたいところだ。基本デザインは私で、最終デザインと制作は富田ウッドワーカーの富田豊治郎氏。

会話

2019.10.21 月曜日 12:49

フランスの街を歩いていると、街中に会話があふれていることに気づく。 みんなそれぞれ会話を楽しんでいて、ひとりで歩いている人は日本より少ない気がする。

歩きスマホでも通話しながら歩いている人を多く見かけるし、ベンチや階段に座っては会話している。マルシェにも多くの人が集まる。店員とコミュニケーションの必要がないスーパーは滅多に見かけない。大型スーパーの出店で個人商店が消滅する日本の状況とは違うようだ。

レストラン、カフェ、広場、それらは楽しく会話するために用意された場なのかもしれない。食事でワインと注文した際のテイスティングでは、私など分かったフリして「OK!」とふたつ返事で終わるのだが、まわりを見るとダメだししたり結構な時間話し込んで銘柄を決めている。「何を飲むか」の話題でそのテーブルはひと盛り上がりするのである。テイスティングという行為は本来店にとって無い方が面倒がなくなるはずなのにあえてその習慣を残す理由はやはりコミュニケーションの場を重要視しているのだと思う。

いろいろ考えてさせらた。せめて英語で「もう少し重いのありますか?」ぐらい言いたくて英会話テキストを買ったりするのだが三日坊主で終わってしまうのだが。

猫の居場所

2019.10.20 日曜日 20:28

今回は猫トイレの話。

猫のトイレはいろいろと考えるべきことが多い。やはり匂いとお掃除のしやすさが一番の悩み。日のひかりが入る廊下の窓下に猫トイレを設計した。

猫の本音はわからないが個室でゆっくりしてもらいたいと思い扉の中にトイレ空間を設けた。そうすることで匂いが外にもれずらくなる。ただ、こもらないよう換気扇を設置し人感センサー付き照明と連動させた。トイレの横には砂のストックとほうきなどを収納し、雑多になりがちなグッズをすっきりさせた。

問題なく機能したのだが、猫は人がいる部屋に一緒にいたいらしく、窓辺はあまり猫の居場所にならなかった。猫にとって気持ちのいい居場所はもう少し勉強が必要のようだ。

台湾のアーケード

2018.08.04 土曜日 17:26

台湾の街並みの大きな特徴としてアーケードの存在がある。詳しくは分からないが建築する際の法律で設置が義務付けられているようで、通りに面したビルには必ず設けられている。 
 
  
 
 アーケードを形成するために1階部分の一部を独立柱によるピロティにするため、地震国でもある台湾でたびたび発生する大地震時にアーケードが要因になってビルが倒壊する報道を目にする。 
 
でも、実際に訪れてみて多彩で有効な用途に驚いた。アーケードはあくまでその建物の敷地内、つまり私有地であり、シチュエーションによって使われ方が大きく違っていてその場所の個性が強く現れる。 
 
  
 
 それ以前に、台湾は亜熱帯なので雨期の台風や夏の日差しからも人通りを守る役割も大きい。不運にも私の旅行滞在期間中、台風直撃でずっと暴風雨だったのだがアーケードの下を雨宿りしながらなんとか旅行を楽しめた。

次回はアーケードの使われ方についてもう少し書きたいと思う。

保育所の計画

2018.07.06 金曜日 10:22

久々の投稿になる。 
 
東村山市で保育所の計画が具体的になりのその報告である。自然に正面から向き合い毎日泥だけになりながら遊びつくす、そんな力強いコンセプトを持つ保育所の建替え計画。今後随時進行状況を投稿したいと思う。 
 
 

表札

2017.12.17 日曜日 17:51

​先日、竣工した住宅の表札を取付つけた。竣工と言っても竣工から取付までかなりの時間か経過してしまったためクライアントには大変迷惑を掛けてしまった。 
 
 
 
表札のデザインはいつもその住宅のためだけのオリジナルとしている。それは長い期間、住まい手さんと話ながら共につくりあげた思入れのある住宅に対し、最後の締めくくりの挨拶のように感じていて、表札づくりの作業を大切にしている。 
 
それは、描き終わった絵の片隅にサインをするのに似ているのように思う。