建物ができあがった際の竣工写真の撮影はカメラマンに依頼せずできるかぎり自分でがんばることにしている。プロには勝てるわけはないが、もともと写真には興味がありチャレンジしている。

写真が好きなこと以外に自分で撮影する理由がふたつほど。
カメラのファインダーを通してみるだけで少し客観的になれて、あまり意識していなかった空間が意図せず絵になったりその逆もある。その空間をよりよく見せるため、カメラをセットする高さや引く位置を決めるが、空間が美しく見える目線の高さなど意外な気づきがあったりする。

もうひとつ大きな理由は、建築と一対一で向き合える唯一の時間だから。
工事中の「現場」は大工さんをはじめ職人さんが主役、竣工すれば当然施主が主役。そのはざまの一日、誰も立ち入らないよう監督さんに無理を聞いてもらい撮影する。自分が主役とは思わないが、己が書いた図面がどのような結果になったのかを静かに考えられる時間で、撮影しながら反省点などをメモなどしている。

だれもいない静かな空間をいったん見ることで、引き渡し後の住まい手さんよって変化していく建築の見え方が違ってくるように想うのだ。

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