建築が消えるとき

2019.10.26 土曜日 14:28

建築設計を生業にしてから久しいが、自身が設計し既に解体された建物は2件ある。ともに仮設的な建築ではあるが。

まずは、保育所の建替えで敷地内に建てた仮設園舎。仮設といっても基礎は鉄筋コンクリートでしっかり作り、時間をかけて検討、計画したので想い強かった。使用期間は数か月ではあったが着工から解体まで見守った。やはり仮設のプレハブ建築の解体はあっという間に終わってしまう。十数日前まで子ども達の声がきこえてきた建物がすっかり消えてしまったとき、更地になった土の上を無意味にうろうろしたのを記憶している。

つぎは、今から二十年以上前、大学在学中に設計した焼物小屋。属していたサークルの美術研究会の活動で使う陶器を焼く灯油窯の小屋。窯は活動の象徴で部員にとって大切な存在だ。長い間使っていた手づくの窯を取り壊すことになり既成の窯を購入し、その囲いを建築学科という理由で私が設計することになった。図面や写真は一切手元に残っていないが、とにかく楽しくて夢中で鉛筆を動かしたことを覚えている。単管パイプを組んで波板で囲うだけの簡単で仮設的な小屋だったと思う。卒業後しばらくして後輩から解体されたことを聞かせれた。

悲しい気持ちにはならなかったがいろいろ考えた。形あるものはいづれ消える。建築なら数十年、車や家電製品は十数年、その他一年で消えるものや数日というのもある。ディナーで出てくる美しい一皿は数十分で消えてしまうのがシェフはどのような気持ちなのか。建築は自分を表現したものが長年存在するので設計者は幸せ者と思っていたが、料理のように一瞬で消えてくれた方があきらめがつくのかな、なんて想ってみたり。

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